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李政道研究所

中国初の
天文物理学研究拠点

  • 世界最先端の
    国立研究所へ向けて

    李政道研究所は、ノーベル物理学賞を受賞した中国出身の物理学者の李政道(Tsung-Dao Lee)が2014年に中国国内における世界最高水準の科学研究施設の必要性を中国政府に提唱し、2016年に国の各省庁や上海市政府の支援を受けて設立が決定された。

    李政道は上海に生まれ、中国で大学教育を終えたのちにアメリカへ渡り、1950年にシカゴ大学で学位を取得した。その後プリンストン高等研究所に入り、素粒子の弱い相互作用におけるパリティーの非保存の理論が実証されたことによって1957年にノーベル物理学賞を受賞した。

  • 未知の領域の解明に挑む

    国家の重点プロジェクトとして新設された本研究所は、物理学、天文学、およびそれらの学際分野において世界をリードしていく国際的な研究拠点を目指し、世界中の科学者がイノベーションの実現を可能とする優れた研究環境を整備した。また、若い研究者が才能を開花できる育成環境を提供し、将来の国を担う優秀な研究者を輩出する構想に対して政府が集中的な支援を行う。

    研究分野は社会や経済の発展に大きな影響を与える基礎科学の中で厳選された研究テーマに焦点を当て、謎の多いブラックホール、ダークマター、ニュートリノなどの領域について、素粒子・原子核物理学、天文学・天体物理学、量子基礎科学の3つの分野におけるメカニズムの解明を行う。

  • 探求を育む空間

    道路に面した研究所の顔は、シンボリックな3つのブロックで構成しており、中央の象徴的なドーム状のアトリウムは、文学・物理学の研究所として宇宙に通じるイメージをもとに新たなランドマークとなることを意図している。
    科学者が快適に日々の研究を行える環境づくりに配慮し、南北の棟はシンプルかつシステマティックな平面形とした。各研究室や実験室は明確にゾーニングされて独立性を保ちながら、交流も行いやすい分棟構成。中央の球体は、活動内容を共有し交流を促す「研究公開プラットフォーム」としての機能的な共用空間を配した。また球体内部はらせん状のスロープで南北の各フロアへスムーズな移動が可能な利便性の高い動線計画とした上で、球体のスロープに面した各階にラウンジスペースを設け、研究者同士が出会うディスカッションが誘発される空間とした。

  • 環境配慮型の建築を目指して

    球形の内部空間は自然換気の誘引する「エコグローブ」を提案し、また施工の難しさを配慮して合理的な範囲でシンプルな構造とした。南面と北面は大学カラーを使ったテラコッタのルーバーを通して風や自然光をふんだんに取り入れるとともに、高断熱性ガラスによる省エネルギー化を図った。ランドスケープでは、世界からの人々を迎え入れるのにふさわしい魅力的な広場空間と遊歩道に連続する森のような緑地空間を形成。そして宇宙の研究に必要不可欠なスーパーコンピューターから放出される熱エネルギーを冬の季節に中央のドームを温める熱供給システムとして再利用を実現するなど、地球環境に優しい研究所とした。

    李政道研究所は世界をリードする研究の起点として、新たな科学技術の開発や革新的なイノベーションの創出が期待される。

竣工年
2020年
所在地
上海市浦東新区
延床面積
56,000m²
階数
地上6階、地下2階
構造
SRC+S

李政道研究所

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