この施設は、1998年2月の第18回冬季オリンピックのスピードスケート会場として計画されたものである。大会後はスピードスケートのメッカとして機能するだけではなく、通年の市民開放利用も含めた、小規模から大規模にわたる各種スポーツ、文化・産業イベントにも対応し得るフレキシビリティが求められた。アリーナの設計に当たり、今までのドーム建築の既成概念を打破し、オリンピックという世界的イベントにおいて、長野を世界に印象づけるユニークな建築であるべき、また長野という地域特性を生かし、長野らしさを表現し、人と地球にやさしい建築であるべきと考えた。
これらのイメージから信州の山並みを表現し、地元の素材を利用してつり橋のような軽やかな構造的架構体の検討結果、善光寺を有する長野に相応しい連格子をイメージした、信州カラマツ材の集成材による半剛性吊り屋根構造とした。集成材と鋼板からなるリブを、60cmピッチに配して80mのスパンを掛け渡すハイブリット構造は、大スパンを覆う架構体としてはシンプルで繊細であり、既存のドームを払拭し、構造的合理性と日本文化および伝統美をも表現している。