DESIGN STORY

カーボンニュートラルチャレンジ(2)

コミッショニングの
推進

コミッショニングがなぜ必要か、
なぜ推進するのか

弊社がコミッショニング※1を担当した「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」は、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)の公共施設のコミッショニング部門で、大成建設(株)と名古屋大学および公益財団法人名古屋産業科学研究所と共に2025年2月に世界1位を受賞しました。
さらに、2025年5月に空気調和衛生工学会のコミッショニング賞も大成建設(株)、愛知県、大成有楽不動産(株)、高砂熱学工業(株)と共に
受賞しました。

ASHRAEや空気調和衛生工学はコミッショニングを重視しています。
建物評価基準であるアメリカ発のLEEDや我が国のCASBEEもコミッショニングの実施を加点ポイントにしています。

なぜでしょうか。

※1 他に基本設計と設計監修および工事監理を担当

コミッショニングを行う
効果とは

コミッショニングを行わない建物では、建物に求められる要求性能が明確でない場合が多く、明確でないままに設計と施工が行われてしまいます。
コミッショニングを行うことで、要求性能が明確になり、その性能の達成に向けて発注・設計・施工の各フェーズでの関係者が作業を行うことができます。

また、計算上ではZEB Ready以上の建物性能としても、運用時のエネルギー消費量がZEB Ready でなければZEBを推進する目的である「CO2排出量の抑制」には繋がりません。

重要なのは実際に大気に排出されるCO2の量です。
運用時のコミッショニングによってエネルギー消費量とCO2排出量を把握し、適切な運用改善をすることが「CO2排出量の抑制」に繋がります。

建築という工業製品に
必要なコミッショニング

工業製品の中でも自動車は、量産体制に入る前に多くの時間を割いて部品の耐久性試験、走行試験や、多様な環境での試験が行われます。

建築の場合は、建物自体が入る巨大な環境試験装置はありません。
運用開始から春夏秋冬を経なければ、試験データが得られず、また、建物内の多様な使い方をすべて事前試験するのは不可能です。

運用時のコミッショニングを行うことで運転データが検証され、設計者+施工者+運用管理者の共通理解の元に運用改善が行われ、
さらなる省エネルギーに繋がります。

コミッショニングとは

コミッショニングとは、施主が掲げる発注者要件(OPR:Owner’s Project Requirement)の記載の目標性能を実現ためのプロセスです。
性能検証とも言います。
建築や設備の設計図書や施工関係書類が要求性能を満たすかどうか、そして運用状況が要求性能通りかどうかを検証して行きます。
このプロセスは、企画・設計段階から施工、運用、そして維持管理に至るまでの全てのフェーズにおいて適用されることが推奨されます。
コミッショニングにより、発注者が求める品質を確保し、エネルギー効率や運用コストの適正化が実現でき建物の性能が長期間にわたり維持されます。
さらに環境負荷の低減が期待でき、カーボンニュートラル実現には必須です。

発注者要件とは

建築計画や環境性能・省エネルギー性能への要求事項を定性的・定量的に記述した、発注者が作成する文書です。

建築計画に関しては、下記のようなものが挙げられます。
・外皮の日射遮蔽と断熱 ・自然採光の取入れ
環境性能・省エネルギー性能に関しては、下記のようなものが挙げられます。
・Nearly ZEBレベルを目指す。 ・建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)における★★★★★の性能を目指す。 ・建築環境総合性能評価システム(CASBEE)において、Sランクを達成する。

コミッショニングの
体制と進め方

コミッショニングでは、性能検証チーム(CT)が構成され、性能検証管理チーム(CMT)が発注者と各フェーズの関係者の役割が最大限に発揮されるようにプロジェクトを進めて行きます。

  • コミッショニング会議(Cx会議)で課題や検討事項を抽出していきます。
    CMTと設計者(または施工者・監理者)が課題解決に向けて情報交換や協議を行い、Cx会議にて、発注者とCMT、設計者や各フェーズの関係者が対応方針を決定していきます。

コミッショニングで
重要な文書化

コミッショニングでは、文書化が重要視されます。
CTの関係者に異動が生じても、引き継いだ人にコミッショニングの内容を正確に伝えるためです。
CMTや設計者の意図を伝達するために、下記に示す計画書や設計趣旨文書およびマニュアル類が作成され、工事請負者、監理者、建物管理者や利用者にその内容が伝達されることがOPRに記載の要求事項の実現には重要です。

  • 施工フェーズや
    運用フェーズでの
    検証と
    Cx効果

    施工フェーズでは、竣工検査とは別に機能性能試験が実施され、OPRの要求事項に沿った運転や運用が可能であるかを検証していきます。

    運用フェーズでは先に述べたように、データの蓄積と分析による運用改善を繰り返すことで、より理想的な運用に近づけていきます。

    このようなコミッショニングの過程を経て、建物は当初に想定した性能以上のパフォーマンスを発揮することができるのです。

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