エンボディドカーボンを構成するアップフロントカーボンは、資材調達や施工段階のCO2排出の総量となります。
また、建築物の骨となる構造躯体のCO2排出量は、アップフロントカーボン量の約40%の割合を占めます。
構造躯体のCO2排出量削減は、カーボンニュートラル実現につながります。
久米設計が関わった直近の過去新築物件を概観すると、用途によって異なるものの、構造躯体のアップフロントカーボン量は、エンボディドカーボン量のおおよそ30~50%であることがわかります。
その中で、木造のCO2排出量は少なく、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)は大きくなります。
| 建物名 | A事務所 | B博物館 | C事務所 | D中学校 | E庁舎 | F庁舎 | G大学 |
| 構造規模 | S造 地上42 地下4 | RC 造地上3 | S造 地上12 | W造 地上1 | S造 地上7 地下1 | S造 地上25 地下2 | S造 地上7 |
| 延床面積(m2) | 199,710 | 7,775.0 | 26,694.0 | 6,055.0 | 27,152.0 | 62,356.0 | 5,589.0 |
| アップフロントカーボン量 | kg-CO2/m2 | ||||||
| 土工・地業 | 20.1 | 57.1 | 47.1 | 2.7 | 98.2 | 62.0 | 9.3 |
| 躯体 | 50% 624.5 | 43% 449.9 | 40% 444.0 | 33% 194.7 | 37% 481.7 | 51% 791.0 | 45% 443.8 |
| 外装 | 89.0 | 78.2 | 41.6 | 89.1 | 62.0 | 112.4 | 128.6 |
| 内装 | 114.7 | 118.9 | 210.0 | 57.8 | 249.1 | 102.3 | 82.0 |
| その他 | 42.4 | 35.2 | 37.1 | 17.0 | 44.5 | 53.4 | 33.2 |
| 電気 | 101.5 | 65.3 | 82.9 | 53.1 | 83.4 | 111.4 | 62.6 |
| 空調 | 85.4 | 84.1 | 98.2 | 59.4 | 98.8 | 95.0 | 96.2 |
| 衛生 | 53.1 | 39.4 | 41.4 | 52.6 | 41.6 | 61.9 | 47.6 |
| 搬送 | 4.6 | 6.7 | 8.8 | 0.0 | 8.8 | 5.5 | 1.5 |
| 施工 | 114.1 | 120.3 | 104.8 | 56.4 | 135.0 | 142.5 | 93.6 |
| 合計 | 1,249.4 | 1,055.1 | 1,115.9 | 582.8 | 1,303.2 | 1,537.4 | 998.4 |
| 凡例 | アップフロントカーボンの割合 | ||||||
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学校事例で見る、構造種別とアップフロントカーボン
直近の学校事例から、構造躯体の構造種別(木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造)ごとに、アップフロントカーボン量を概算すると、
構造種別でアップフロントカーボン量に違いがあることがわかります。
構造躯体のアップフロントカーボン量は、木造<鉄骨造<RC造の順番と言われていますが、
今回比較対象とした、延べ床面積が5,000~6,000m2の学校建築では、
木造<RC造<鉄骨造の順番に、構造躯体のアップフロントカーボン量が大きくなる結果となっています。
学校建築においても、その計画によって構造躯体量は異なります。
ここで明らかなのは、木造の学校建築は、S造、RC造の学校建築に比べて、構造躯体のアップフロントカーボン量が少なくなることです。
今回の比較では、木造の場合、S造、RC造に比べて半分以下となっています。
| 某中学校 | 某大学A | 某大学B | ||
| 用途 | 学校 | 学校 | 学校 | |
| 面積(m2) | 6,055 | 5,469 | 5,589 | |
| 構造 | 木造 | RC造 | S造 | |
| 躯体の アップフロント カーボンA1-3 kg-CO2/m2 |
コンクリート | 122.8 | 251.0 | 144.9 |
| 鉄骨 | 0.0 | 19.1 | 187.9 | |
| 鉄筋 | 44.4 | 106.2 | 64.7 | |
| 木材 | 23.6 | 0.0 | 0.0 | |
| その他 | 3.9 | 20.9 | 46.3 | |
| 杭除く小計 | 194.7 | 397.2 | 443.8 | |
| その他 | 外装 | 89.1 | 86.5 | 128.6 |
| 内装 | 57.8 | 88.9 | 82.0 | |
| 建築その他 | 17.0 | 30.0 | 33.2 | |
| 電気 | 53.1 | 62.6 | 62.6 | |
| 空調 | 59.4 | 96.2 | 96.2 | |
| 衛生 | 52.6 | 47.6 | 47.6 | |
| 搬送 | 0.0 | 1.5 | 1.5 | |
| 施工 | 56.4 | 119.2 | 93.6 | |
| 合計 | 580.1 | 929.8 | 989.0 | |
| S造を100%としたときの躯体の割合 | 43.9% | 89.5% | 100.0% | |
| S造を100%としたときの全体の割合 | 58.7% | 94.0% | 100.0% | |
| 木造< | RC造< | S造 | ||
A市庁舎に採用した木造床は、耐火性能、床剛性に配慮し、上下のCLT版(150㎜)を山形トラスで綴ったCLTトラス床です。
木材使用量は1425m3(原木調達4500m3)であり、木材利用によるCO2貯蔵量は、992t-CO2(36㎏-CO2/m2)です。
カーボンオフセット量は、2011t-CO2(二酸化炭素固定量と削減量の合計)、約2.7haの杉の人工林が50年間に吸収する炭素量に相当します。
木造床の概要図
Bスタジアムの屋根材には、軽量で採光のとれるA種膜を採用しています。
膜材のアップフロントカーボン量は、金属屋根(ガルバ折版)に比べてCO2排出量を28%(1050t-CO2)削減しました。さらに、屋根材の軽量化で鉄骨量が15%程度削減しています。
5000席、約90mスパンのアリーナの屋根構造に、集成材による木造化を提案しています。
木造化によって、CO2排出量(169㎏-CO2/m2)は、鉄骨造に比べ約50%以下となります。木造化は、CO2排出量削減に効果的です。
さらに、大規模アリーナでは、木造と鉄骨造ではCO2排出量の差が大きくなります。
(試算10000席、110mスパンでは、鉄骨造:CO2排出量32%増、木造:15%増)
適齢期50年材を伐採し、植林を行う計画とすると、鉄骨造に比べてCO2削減効果は高い
RC造とS造を比べると、建物階数(規模)が増えるとアップフロントカーボン量は大きくなりますが、その差は小さくなります。
プレキャストプレストレストコンクリート(PCaPC)造は、構造断面を小さくでき、アップフロントカーボンを低減します。
耐震性能を高めることは、地震災害時の構造躯体の損傷を抑え、地震LCCを高めます。
免震、制振構造の場合、50~100年の建物耐用年限中に発生する大地震に対して、構造躯体の損傷を抑えることができるため、建物の損傷個所の修復や廃棄物を低減します。
すなわち、耐震性能の高い免震構造や制振構造は、アップフロントカーボン量の削減につながります。
| 制振構造 | 削減効果 10% |
| 免震構造 | 削減効果 15% |
構造躯体のアップフロントカーボン量を低減する構造架構を提案します。対象となる建築物は、センターコアに両側を執務室とする、地上5階建て、延床面積10,000m2、オフィスビルです。
カーボン量を低減する手法は、材料、工法、構造種別、構造計画の工夫があります。
構造躯体に用いる構造材料は、低炭素材料とします。コア部分には高炉スラブセメント(C種)用い、柱梁構造には、プレストレストコンクリート(PC現場緊張)造とします。
執務室の柱梁の構造には耐火木造を使用し、床はCLT版を用いた複合床とします。
構造性能は、建物の耐用年限期間中(50~100年)の地震災害等に対して、躯体は無損傷とし、建替えや補修によるCO2排出量を抑える基礎免震構造とします。
これら、CO2排出量を低減できる構造形式、マテリアルの採用により、一般的なRC+S造に比べて、構造躯体のアップフロントカーボン量を23%低減できます。
RC+S造:約520kg‐CO2/m2
→RC+木造:約400kg‐CO2/m2
低炭素材料と架構計画によるCO2低減効果
・RC造部
【材料】高炉スラグC、高炉セメント使用
【工法】柱梁へのプレストレス導入
・S造部(継手)
【材料】グリーン鋼材、電炉材使用
・架構計画
【計画】小スパンで梁断面低減
・木造化
【材料・種別】CLT床、耐火木造(集成材)柱梁
・免震構造
【計画】免震化による高耐震・高耐久(100年)