DESIGN STORY

岡山市立市民病院

市民病院の
新しい姿を求めて

  • 存続の危機を乗り越えて

    岡山市立市民病院は1936年の開院依頼、長きにわたり市民の為の医療を提供してきた。施設の老朽・狭隘化が進み、2000年頃より建替えの検討が始まったが、既に市内には大学病院を始めとして多くの病院があり、そのような状況において公費を投じての建替え事業について市民の理解を得ることは困難を極めた。存続中止の議論も出る中、改めて市民病院の果たすべき役割について、文字通り市民を巻き込んでの議論がなされた。2010年に新市民病院の骨格がまとまり、移転敷地をJR北長瀬駅前に広がる旧国鉄岡山操車場跡地に定め移転事業がスタート。2012年にプロポーザルが行われ設計が始まったが、骨格はその時から変わっていない。急性期病院としての機能性と療養環境を両立した病棟は十字形が二つ並んだ形態をしている。市の鳥であるタンチョウが大空に羽を広げ、羽ばたくイメージを重ね合わせた。
    構想から15年、2015年に新市民病院が開院した。

  • 存続の危機を乗り越えて

    岡山市立市民病院は1936年の開院依頼、長きにわたり市民の為の医療を提供してきた。施設の老朽・狭隘化が進み、2000年頃より建替えの検討が始まったが、既に市内には大学病院を始めとして多くの病院があり、そのような状況において公費を投じての建替え事業について市民の理解を得ることは困難を極めた。存続中止の議論も出る中、改めて市民病院の果たすべき役割について、文字通り市民を巻き込んでの議論がなされた。2010年に新市民病院の骨格がまとまり、移転敷地をJR北長瀬駅前に広がる旧国鉄岡山操車場跡地に定め移転事業がスタート。2012年にプロポーザルが行われ設計が始まったが、骨格はその時から変わっていない。急性期病院としての機能性と療養環境を両立した病棟は十字形が二つ並んだ形態をしている。市の鳥であるタンチョウが大空に羽を広げ、羽ばたくイメージを重ね合わせた。
    構想から15年、2015年に新市民病院が開院した。

市民の為の「断らない医療」
~「岡山ER」の誕生~

新市民病院の顔は救急になっている。新病院建替えに課せられた役割の一つが、24時間365日、全ての救急患者を断らずに受け入れることであった。初期救急患者は、ここで一旦受け入れ、重症度に応じて岡山大学病院や他の医療病院へ適宜トリアージ搬送を行う”救急医療のハブ”ともいえる機能を果たす。「岡山ER」と名付けられたこの救急方式は、全国的にも新しい取り組みであり、その専用面積は西日本最大規模の約1400㎡ものスペースを有する。一般的な処置スペース以外にも、救急専門医師を教育していくための研修スペースを充実させた。岡山ERの設置場所も、通常の病院計画ではメインエントランスにあたるであろう大通りに面した南側一等地に置いた。専用ロータリーには救急車が6台停車できるスペースと救急隊待機所などを設け、文字通り救急搬送患者を最も効率的に受け入れられる構えとした。

  • 「動」と「静」
    ~二つのモールをつくる~

    日々、病院には患者以外にも多くの人たちが訪れる。私たちは移動のための空間と、診療を待つ間を過ごす空間、その二つが明快に分かれることで、より快適な癒しの空間ができるのではないかと考えた。
    新市民病院では「ホスピタルモール」と「外来モール」の二つのモール空間を設けた。「ホスピタルモール」は東西に設けられた二つのエントランスを繋ぐ二層吹き抜けの空間である。中央に設けた光庭には二本のシマトネリコが植えられ、院内に居ながら陽の光や風のそよぎが感じられる。モール沿いには売店やラウンジ、ギャラリーなども設けられ、街中の雰囲気が感じられる空間となっている。
    一方の「外来モール」は診療を受ける患者のための空間である。通路幅や天井高さはあえて抑え、内装には木を積極的に活用するなど、患者のための静かで落ち着いた環境を作り出している。
    開院して5年、光庭のシマトネリコも大きく育ち、潤いのある癒しの空間が生まれた。

  • 街と繋がる
    ~JR北長瀬駅前広場との一体整備~

    新市民病院はJR北長瀬駅の駅前広場に面して立つ。広域からの患者の利便性を高めるため、新市民病院の設計と合わせて、駅と病院を繋ぐペデストリアンデッキの設計も行った。
    高架の駅舎のコンコースと病院2階のホスピタルモールを繋ぐことで、雨にぬれずに安全にアクセスが可能となっている。また、駅前広場に面してポケットパークや、多目的ホール、カフェ、岡山市保健局が運営する地域ケア総合支援センターなど、医療と福祉・健康を繋ぐための施設を整備した。多目的ホールでは市民を対象にした様々な医療講座も開催されている。駅前広場に面して設けられた大きなガラス面を通して、それらの活動が街にあふれ出し、広く市民に開かれた病院となっている。

  • 市民と共に歩み、
    街とともに成長する病院

    開院して5年が過ぎ、新市民病院に隣接した敷地には「食と健康」をテーマとした商業施設がオープンするなど、新市民病院を中心に街が成長していく様子がわかる。
    また、院内では開院以来、市民を対象とした様々な催し物が開催されている。
    「この町であなたと生きる」をテーマに開催されるこれらの催し物は、治療の場以外の市民との交流を通して、病院という施設に触れる機会を増やし、いざという時に頼られやすい、そんな市民の為の病院でありたいという関係者の思いが詰まっている。

    一時は存続も危ぶまれた岡山市立市民病院は新しく生まれ変わり、市民に寄り添い、着実に歩みを進めている。

竣工年
2015年
所在地
岡山市北区
延床面積
34,378m²
階数
地上8階
構造
SRC/一部S/免震

岡山市立市民病院

岡山市立市民病院の実績詳細を
こちらよりご覧いただけます。

お問い合わせ

弊社への依頼、相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。