NHK奈良放送局の建替計画である。地域に根差した施設づくりと災害時においても放送を継続できる強靭な建物を目指した。計画地は三条通りに面した角地で、奈良の新たなにぎわいの場として期待されている街区である。地域の人との接点となる公開エリアは、街区内の広場空間に大きく面するように配置し、街の賑わいに寄与する開かれた設えとした。外観は、季節や時刻に応じて影が変化していく水平基調とし、日々変化する情報を発信する放送局に相応しいデザインとした。夕日に浮かぶ鉄塔のシルエットは五重塔のようであり、奈良の景観に馴染むよう配慮を行った。災害時においても情報を発信し続けるという使命実現に向けて、非常用発電機からの電源供給や空調熱源の多重化、免震構造の採用など放送機能を維持するためのシステムを構築した。地域の暮らしを守る安心・安全な放送局から奈良の歴史・文化を次の世代へとつなぐ放送局である。