「なはーと」は那覇市のみならず、沖縄地域を牽引する舞台芸術創造の拠点であると同時に、近隣住民の日常的な賑わいに溢れる場を生み出すことを目的としている。外観は建物全体を織物のような被膜で柔らかく包み込むことで、住居と商業施設が混在する中心市街地の中で巨大な塊となる劇場施設を周囲のスケールに合わせると同時に、新たな那覇のランドマークとなることを目指した。施設は全方向に積極的に開き地域とのつながりを持たせ、沖縄・那覇地域独自の要素を取り入れた賑わいを生み出す空間とした。内部化された屋外広場としての「ウナー(御庭)」を中心に、「スージグヮー(細路)」のような通り抜けのできる通路を設け、賑わいと回遊性を高めた。3層吹抜けのウナーには、練習室や劇場のホワイエが立体的に表れ、活動の賑わいに包まれる。「首里織(花倉織)」の構成を再現した外観の被膜は、日差しや視線を和らげ、建物を防御しつつ、この場所ならではの景観をつくる。そこにできる軒下空間は「アマハジ(雨端)」として日陰をつくり、人々を優しく施設に迎え入れる。
設計:香山建築研究所・久米設計・根路銘設計共同企業体