DESIGN STORY

江東区立有明西学園

木造の校舎で子どもたちの9年間をつなぐ

  • 地域の歴史と誇りを伝え、
    未来に継承する

    江東区は古来より都市インフラを支える巨大な貯木場を始め、 木材流通を地場産業とする歴史を持ち、地球温暖化を抑制する積極的な木材利用に取組んでいる自治体である。成長に大きな影響を与える義務教育期(小学校1年~中学校3年)に子どもたちが木と関わり、教材として活かせる「木の学び舎」を実現させるとともに、隣接する東京オリンピック・パラリンピックの施設群と連携して木の文化を世界に発信し、都市に木のレガシーを継承させるミッションも同時に与えられた。

  • 大規模な木材利用により
    森林資源のサイクル維持に
    貢献する

    利用可能な森林資源が充実してきている日本の林業、木材 産業の状況も踏まえ、耐火集成材の木構造で414m3、仕上げや家具などの木質化で752m3、合計で1166m3 もの木材を積極的に活用した。自然素材の木が持つ温もりや柔らかさを始め木の文化を伝承することなど、木構造化・木質化は「教育の場」との相性が特に良いことから、子どもたちが生活の大半を過ごす普通教室や、移動・ 交流の場を中心に効果的に木を使うことにした。今後、都市における大規模な公共インフラにもなり得る義務教育学校を汎用性が高いRCとのハイブリッド構造を用いて木構造耐火建築として実現することで、地球温暖化防止に繋がる今後の森林資源のサイクルの継続に貢献し、さらに今後木材利用が社会全体に広がっていくことを期待している。

  • 9年間の生活と学びをつなぐ
    「木の回廊」と「ことばのかべ」

    1~9年生が共に生活する義務教育学校に一体感をもたらすための軸として、耐火 集成材の柱が連続する「木の回廊」で校舎全体を結び、カラマツの下見板張りで覆われた吹抜け階段の壁面に子どもたちに伝えたい言葉や、様々な学びを誘発する言葉や記号などを「焼印」のように刻んだ「ことば の壁」を設けることで、学年や教職員の枠を超えた偶発的な交流、そして自ら学びに興味をもつアクティブラーニングを誘発する環境づくりを目指した。

適材適所の木材利用を
木育に活かす

木の特徴を活かした学校モデルを実現するために学識経験者を含めた検証委員会を開催し、木育や耐久性を踏まえた木材の使い方について方針を決定した。

①木材活用の実績となる一定量の木材使用量を確保する

②耐火集成材の柱に使用するカラマツ材を中心とした適材適所の木材選びを行う

③木材は主に子供たちの手に触れる場所に使用し、節をあえて残すことで自然素材が本来もつ良さを体感し、
経年変化の味わいや清掃などを通した「木育」を行う

④耐久性とメンテナンス性を考慮して雨がかりの木材使用を避ける

子どもたちのために建築ができること

「ことばの壁」や様々な樹種の特徴を体感できる「シンボル柱」を始め、ビオトープを中心とした屋上の緑化空間など、そこで生活するだけで様々な気づきが触発される空間づくりを行っている。子どもたちの発案により、「ポプラ」等の木の名称の9学年縦割り班で遠足や運 動会などに取り組むことにより、低・高学年の双方が成長できる活動や、校舎の使用木材の 90%をしめる国産木材のうち、耐火集成材のカラマツの産地である長野県長和町と校外学習活動の協定を結び、毎年8年生が 耐火集成材加工工場の見学と伐採地域での植林体験授業が行われている。

竣工年
2018年
所在地
東京都江東区
延床面積
24,494m²
階数
地上5階
構造
W/RC/一部S/SRC

江東区立有明西学園

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