DESIGN STORY

さいき城山桜ホール

中心部の賑わいを
取り戻しまち全体を活性化

  • 文化施設を中心とした、
    まち活性化プロジェクト

    佐伯城の城下町として栄えたこの大手前地区は、近年まで買い物客でにぎわう商業の中心地であったが、デパートの撤退、近隣ロードサイドショップの開店、商店街の火災などにより衰退し、空き地となっていた。ここに文化施設を中心とした整備を行うことで、かつての賑わいを取り戻し、その賑わいによって市全体を活性化しようというプロジェクトである。

    中心となる通りに面して、メインとなる文化施設「さいき城山桜ホール」および「情報発信館」をその活動が見えるように配置した。さらに、性格の異なる2つの広場を設けることで、常に人が集まる風景を作り出している。私たちは地区内各施設の設計だけでなく、街区全体のデザイン監修も行った。

    市の計画では当初、バス動線が中央の通りを通過するような配置となっていたが、地域住民の意見を受けてバスロータリーを地区の東側にまとめる案を提案した。この提案を元に、市担当者はわずか1か月で調整を行い、道路計画の変更が実現した。
    その結果、日常的な安全性が高まり、市民が安心して過ごせる居場所となったほか、中央の通りを歩行者天国とすることで大規模なイベントも開催できるようになった。

  • まちの歴史・景観と調和する

    「さいき城山桜ホール」の名称は市民からの公募によるもので、「城山」とは佐伯城の石垣が今も残る城跡を指し、市民の心のよりどころとなっている。佐伯城の城下町として栄えた大手前地区は、今も古い町並みや蔵、寺社が多く残されているが、ここに高さ26mのホールを計画するにあたり、その歴史ある街並みといかに調和させるかが課題であった。

    そこで、まず高さのある「フライタワー」部分を通りから後ろに下げ、圧迫感を軽減した。さらに屋根を小さな要素に分節し、周囲の瓦屋根と色調を合わせ、勾配を持たせた形状とした。また1階部分にも軒が連なるよう庇を設け、かつての風景を想起させる計画とした。

    向かい合う商業施設の並びに合わせ、壁面も小さな要素に分節することで、小さな建物が並ぶような形状とし、スケール感、形状ともに街並みと違和感なく共存できるデザインとした。

  • 光溢れる居心地の良い場が
    文化活動を活性

    桜ホールの内部は、分節した屋根の隙間から柔らかな自然光が差し込み、全体が明るく居心地の良い空間とした。また、施設が一体的に感じられるよう吹き抜けを多く設けた。テーブルを多く配置することで、市民が休憩したり、談笑したり、高校生が勉強したりと、いつでも立ち寄れる市民の居場所となっている。

    桜ホールのすべての活動室はガラス越しに中が見える設計とした。楽器の練習や調理実習、絵画教室、ダンス、ヨガ、ピラティスなど、さまざまな活動が開放的に行われ、いつ訪れても市民の多様な文化活動が目に飛び込んでくるように配置を工夫した。市民の居場所から活動が見えることで、その活動が施設全体の賑わいを生み出し、次の文化活動を呼び込むきっかけとなることを意図している。

    加えて、通りにも活動室が面するように配置し、まちに対して文化活動の賑わいを発信する計画としている。

  • 文化活動が、
    施設の賑わいをつくり、
    まちの賑わいをつくる

    ロビーコンサートや展示、フリーマーケットなど、様々なイベントが可能なアートプラザを桜ホールの中央に配置し、市民の発表の場を設けた。そして、それを観ることができる階段や屋内テラスなどを設けることで、様々な場所からイベントを楽しめる構成とした。移動間仕切りを開放することで、大ホールと小ホールを共用部と一体的に利用できる。
    また、北側のガラスを開放することで外部広場ともつながり、大きな催し物にも対応している。そのほか、広場での単独イベントや、道路を歩行者天国として利用した、地区全体を活用した大規模イベントも開催可能で、まちの賑わいの中心的な役割を果たしている。

    既存ホールの利用実績を見ると音楽イベントの割合が多かったことから、大ホールは音楽に最適なシューボックス形式を基本としながらも、可変式プロセニアムを設置することで、演劇や講演会にも対応できるホールとした。

    1階客席はすべて収納することでフラットな床とすることができ、展示イベントやセンターステージ形式のイベントも開催可能で、多様な利用目的に対応できる。

  • 日常的に人がいる
    風景を生み出す

    大手前地区内のメイン施設である桜ホール、情報発信館、バスシェルター、2つの広場、駐車場の設計に加え、道路設計を含めた地区全体のデザイン監修を担当した。外構と道路の色彩や意匠を統一してデザインし、商業施設と情報発信館の西側に新設したバスターミナルと駐車場から、情報発信館を通過する動線をつくることで、利便性を高めるとともに、地区の一体化や、公的情報の周知、商業施設への立ち寄りを促す効果を生み出した。

    地区内には、芝生が広がる「ごろごろパーク」、可動式ベンチのある「ぱくぱくテラス」、木陰と語らいのベンチがある「ポケットパーク」の3つの異なるたまり空間を整備した。これら3つの場に加え、歩道にも家具や木陰などの仕掛けを点在させ、学生や高齢者、子ども連れなどさまざまな人々が、日常的に思い思いの居場所を見つけて過ごすことができるよう心掛けた。

竣工年
2020年
所在地
大分県佐伯市
延床面積
6,480m²
階数
地上3階
構造
RC/一部SRC/S

さいき城山桜ホール

さいき城山桜ホールの実績詳細を
こちらよりご覧いただけます。

お問い合わせ

弊社への依頼、相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。