撮影:エスエス 加藤 俊史
図は、電力やガス・油(非電力)などを消費することで排出されるCO2を減らし、究極的には排出量をゼロにするためのプロセスを表したものです。
省エネルギーを推進してエネルギー消費量を極力減らし、電化の促進や再生可能エネルギーおよび水素ガス・新ガス等の普及によって排出原単位を削減します。
そして、CO2を回収・貯留することで排出量の収支をゼロにしていきます。
国は、以上のプロセスを実現するためにGX(Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称)、を推進し、CO2などの温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとしています。
GXはすべての産業に対して行われますが、建築やエネルギーに関連する主な分野は以下の6つです。
◼天然ガスから水素やアンモニアに移行
◼鉄やセメントの脱炭素化
◼ZEBやZEHの推進と木造建築の普及拡大
◼デジタル投資とデータセンターのカーボンニュートラル化
◼再生可能エネルギーの推進と安定化のための蓄電池の開発普及拡大
◼ディマンドリスポンス対応
私たち久米設計はGXを推進するために、ZEBの実現を推進してきました。
計算でのZEBの実現は当然のこと、運用実績値でのZEBの実現を重視し、
弊社のZEBチャートには運用実績でのエネルギー消費量比率(BEI)を掲載しています。
国のCO2排出量削減目標は、2013年比で2030年度46%減、2035年度60%減、2040年度73%減です。
2017年に施工された建築物省エネ法は2024年に強化され、2030年までにはさらにその水準を引き上げられ、
BEI<=0.6~0.7即ちZEB Orientedが最低基準となります。
一方で、2025年現在で設計されている建物は、遅くても2030年には運用を開始し、その後も使用されCO2を排出していきます。
BEIを小さくする行動は早く開始すべきであり、久米設計は、今設計している建物からでも少なくてもZEB Oriented 水準以上とすることを施主に提案し、Nearly ZEBやnet ZEBの実現を促進させ、国の目標達成に貢献します。
エネルギー消費量やCO2排出量削減と同様に考えなければならないのが水資源の保全です。
私たちに大切な農業用水や生活用水の需給バランスが崩れ始めています。
また、きれいな水道水を手に入れるにはエネルギーが必要です。
建物で使用される水には飲料水、トイレの洗浄水、植栽への散水があります。
特に、水使用量が最も多いトイレの洗浄水には水道水を極力使わない努力が重要です。
そのためには、雨水利用設備や排水再利用設備の普及が重要です。
エネルギー消費量に関してはZEBという目標がありますが、水の消費量にもZWB(ゼロウォータービル)という目標があります。
このZWBの実現もZEBと同様に私たち建築関係者の課題です。
ZWBは、建物における“総水使用量または総飲料水(上水)量”を“代替水量”と“還元水量”の和で補うという考え方です。
我が国のZWBの基準はなく、下記に米国でのZWBの評価規準を記します。
何れの規準でも、ZWBを達成するためには、節水型器具などを採用して「①上水使用量が含まれる“総水使用量または総飲料水量”を削減する」とともに、
排水の再利用水や雨水および再生水を利用して②代替水量”として①の一部を賄うことが必要です。
これら①と②の水量削減は、前述した水資源確保に関する対策として重要です。
さらに、“③還元水量”を評価項目に加えることで、雨水を地下へ浸透させることを重視しています。
雨水を土中に還すことは、河川の氾濫の防止や地下水の涵養および下水道の負荷削減にもつながります。
久米設計はZEBの推進だけでなく、医療施設での大幅なCO2排出量削減を実現してASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)から世界最高の評価を受けた帯広厚生病院や、コミッショニング(性能検証)の実施によってnet ZEBを達成し、ASHRAEの高評価を受けた愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所など、多様な取り組みを行っています。
ZWBの実現に関しては、川崎市庁舎や虎の門ヒルズステーションタワーで多くの取り組みを行っています。
今後も、地球的な規模のカーボンニュートラルの実現に向けて研鑽を重ね、2050年のカーボンニュートラルに向けて環境性能に優れた建築を世の中に創り出していきます。